前回は、初めての香川県出張で食べまくった讃岐うどんについてレポートしたが、実は香川県には、もう一つ胃袋を直撃してくる名物がある。

ガブリとかぶりつくのが正解?

高松駅は瀬戸大橋線の開通前は宇高連絡船の接続駅であったため、どんつきの駅となっている

 多度津町での用事を終えると、電車に乗って高松駅に向かった。予約していたホテルにチェックインして部屋に荷物をおろすと、すぐ近くにあるアーケード街「高松中央商店街」へ。そこは、総距離2.7kmという日本一長いアーケード街で、ここには約1000軒の店があるとか。おかげで高松市民は、知らず知らずのうちに健脚に鍛え上げられているのではないだろうか。

 実際に歩いてみたが、これが本当に長い。しかも一本道ではなく、アーケードが枝分かれしていて、「いったいどこまで行けば終わるのか」という軽いダンジョン感まである。全部歩き通すのは、あっという間に諦めた。

 そもそもアーケード街に足を運んだ目的は、晩酌用の居酒屋探しである。狙いは香川県名物の「骨付鳥」。事前にネット検索して初めて知った料理だが、骨付鳥などという食べ物は、これまでの長い人生のなかで見たことも聞いたこともなかった。

 幸い、ホテル近くのライオン通商店街には飲食店がずらり。その中で、看板に「骨付鳥」と大きく書かれた個人経営っぽい店に入ることにした。他にも骨付鳥を出す店は多くあったが、決め手は “広すぎず狭すぎず、なんだかちょうどいい店構え” である。飲食店選びにおいて、この「なんだかちょうどいい」は意外と重要だ。

 カウンター席に着くと、もちろん注文したのは「骨付鳥」。骨付鳥には「おや」と「ひな」が2種類ある。「おや」は肉が硬いが、噛めば噛むほど肉の味が出るツウ向け。「ひな」は肉が柔らかく食べやすい初心者向け。地元の人の「おや」を好むらしいが、こちらは観光客である。無理にツウぶるとロクなことにならないので、素直に「ひな」を頼んだ。

皿に残った大量の鶏の油にキャベツを浸して食べるのが流儀

 テーブルに調理用ハサミが置かれていて、これで肉をチョキチョキと切り分ける。塩コショウにスパイスが効いた味付けに、柔らかくジューシーな肉。これはもうビールが進まないわけがない。香川県民は大晦日にそばではなくうどんを食べるそうだが、クリスマスにはきっと骨付鳥を食べるのだろう。

切り分けることで、複数人でシェアすることもできる

 この骨付鳥は鶏の骨付きもも肉をオーブン釜などで焼き上げたもので、丸亀市が発祥。1950年代に丸亀市の飲食店の店主が、アメリカ映画で女性が骨付きのチキンを豪快に食べるシーンを見て感動し、試行錯誤の末に完成させたのだとか。

 ということは、本来はハサミで小分けにしたりしないで、そのままガブリとかぶりつくものだったのか。でもまあ、地元の人が行く店にハサミが置いてあるのだから、こちらの人もはさみで切って食べるのだろう。

2回目はツウを気取ってみたものの……

 前回のうどん編でも書いたが、この1か月後に再び高松を訪れることとなった。昼間は当然うどんを食べ、夜は再び骨付鳥に挑戦した。前回はひなを食べたので、心はもう初心者を卒業。ツウを気取っておやを食べてみた。

見るからに硬そうな肉

 ……難敵、硬い。ハサミで小分けにしても、肉の塊を食べるのに悪戦苦闘。噛めば噛むほど味が出るどころか、その前にあごが疲労困憊である。ガブリとかぶりつくなんてとんでもない。下手をすると、いつまでも噛み切れない鶏肉を口に入れたまま、「鶏肉味のチューイングガム」を延々と味わうことになる。

 こんな硬い肉を平然と食べる香川県民。だから、うどんのコシにも厳しいのかもしれない──などと、勝手なことを考えながら、なんとか完食した。

 それから月日がたって3年後。三度、高松の地に降り立つ機会があった。3度目の骨付鳥は、無理にツウぶったりせず、“初心に帰って” ひなをいただいた。やはり鶏肉は、適度に柔らかいほうがありがたい。

 それでも、もし四度目の高松があるなら、また「おや」に挑戦してみたいと思う。いつの日か、「噛めば噛むほど分かる旨さ」を理解できる、本物のツウになれるかもしれない。

 最近では、出張の目的が仕事なのか、ご当地メシなのか、自分でもだんだん分からなくなってきている。

おまけカット:丸亀駅から徒歩10分ほどのところにある丸亀城。全国に12しかない「現存12天守」の一つ

関連リンク

讃岐うどん(Wikipedia)

高松中央商店街(Wikipedia)

骨付鳥(うどん県旅ネット)

高松ライオン通商店街(公式サイト)

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佐久間賢三

一昨年、昨年と旧正月をマレーシアのイポーで過ごす。今年も行きたかったが、今年の旧正月は2月17日。月の半ばは出張が入ることが多く、断念。気が早いが、来年の旧正月は2月6日(土)。来年は必ずまた訪れようと、心に誓っている。