イポー2日目、今日は旧正月の大晦日。この日は「除夕」(華語:チュー シー、広東語:チョイ ジッ)と言って、夜は家族で集まってご飯を食べるのが習慣。というわけで、連続して2軒の家にお呼ばれした。この夜が旧正月のクライマックスで、今回は写真が盛り沢山である(ちなみにこのイポー旧正月編、去年の話をベースに書いているが、今年もイポーで旧正月を過ごしてきたので、写真は今年撮ったものも入っている)。

「もっと食べろ」攻撃をかわして2軒目の食事へ

 除夕の晩ご飯のことを、華語(標準中国語)では年夜飯(ニエン イェー ファン)、広東語では團年飯(トュン ニン ファーン)という。中国にいた頃、広東人の家で一度、上海人の家で一度、そして東北人(黒龍江省)の一家&友人と一度、年夜飯を一緒にしたことがある。マレーシアでは今回が初めてである。

 夕方、ある一家の家にみんなが集まり、お菓子をつまみながらマッタリしていたら、「さあ、ご飯だよ」の声が。キッチンに行くと、丸いテーブルには料理がズラリ。いつもより料理の数が多い。年夜飯の始まりである。

この一家は全員が帰省していて10数人もいて、イスに座りきれなかったため、立ったまま食べていた人も

 とはいえ、すでに別の一家から年夜飯のお誘いを受けており、ここでお腹いっぱい食べてしまっては、次の家で何も食べられなくなる。というわけで、おかずを少しつまんで、スープ飲むぐらいにしておいた。

 このままイスに座っていたら、いつ「もっと食え〜」攻撃が飛んでくるか分からない。そこで、イスの数が足りなくて立って食べていた人に、さりげなくイスを譲るふりをして立ち上がり、早々にリビングへ退散した(それでも30分くらいは食卓にいたと思う)。

 それからまもなく次の一家の人が迎えに来て、車で彼らの家に。そしてここでは、やってみたかった撈生(ロゥ サン)をついに経験することができた。これは、旧正月に行うマレーシア華人の伝統的な縁起担ぎイベント。以前の旧正月で彼らがインスタやフェイスブックにアップした撈生の動画を見て、いつかやってみたいと思っていたのだ。

 撈生は「魚生」(広東語ではユー サンと発音するが、現地の英語表記では「Yee Sang」と書かれていた)と呼ばれることもあり、ビジネスの成功や家庭の繁栄を願ってやっているそう。

 料理が並ぶテーブルの真ん中には、彩り豊かな野菜の千切りと柑橘類、生魚がきれいに盛られた皿が。それをみんなで囲んで、「1、2、3!」(ヤッ イー サーム!)の合図とともに、一斉に箸でつまんで高く持ち上げて混ぜる。

混ぜた後は、もうグチャグチャ。韓国のビビンバのように、混ぜれば混ぜるほど美味しくなる?

 ネットで調べると、この時に「撈起!(ロゥ ヘイ)」と叫んで運気アップを願うと書かれていた。しかし、改めてこの時の動画を見ると、その言葉は聞こえず、代わりに「發啊!」と言っていた。

 この「發啊!」は商売繁盛やお金儲けを祈る言葉だが、彼らは広東人でありながら、広東語の「faat ah」ではなく、閩南語(中国の福建省南部および台湾の方言)の「huat ah」と言っていた。その理由は、マレーシアの華人は閩南系(福建系)が最も多く、広東系の人でも閩南語由来の表現を使うことが多いから。あとは、「huat ah」のほうがより音の響きが力強いと感じられるからだそう。

 言葉のことを書いていて、あやうく忘れそうになったが、この撈生はかき混ぜた後、もちろん食べる。かき混ぜる前に東南アジアっぽい甘酸っぱいソースがかけられていて、意外に美味い。これをみんなで食べたら、食事の開始。

マレーシアの爆竹は命の危機レベル

 年夜飯の後は、一家で寺へお参りに。こちらでは年末に行くらしい。お線香を買って、見よう見まねでお線香をお供えして拝んでいった。

夜10時半頃には、すでに人がいっぱい(以下、お参りの写真は今年のもの)
斗母宮は道教の寺院
ここでお線香を購入。一番高い9リンギットのものは日本円で300円
9リンギットのお線香
いろいろな神様に線香をお供えしていく

 家に戻ると、財神(広東語:チョイ サン)を家にお迎えするため準備。財神が家に来てくれれば、翌年も家に財をもたらしてくれるのだとか。それが終わると、イポー市内に住む一族の人たちが続々と車に乗って集まってきた。筆者がお世話になっている家の隣には、一族の親戚の家が4軒並んでいて、みんなが集まりやすいのである。

ワンロールにいったい何発の爆竹が使われているのやら

 そこに出てきたのが、爆竹のデカいロール。ラベルには長さ88尺とある。中国の1尺は33.3cmなので、88尺は計算すると30m弱もある。ちなみに長さが88尺なのは、中国語で8という数字は、先ほど説明したお金儲けを意味する「發」と発音が似ていて、縁起のいい数字とされているから。

 この爆竹のロールを転がして、家の前の道路に敷いていく。この爆竹、耳を塞がずにはいられないほどの爆音。少し離れていても破片や火花が飛んでくる。それが30mも続くのだから、迫力がスゴい。爆竹は中国でも何度も見たが、マレーシアの爆竹は中国のものと比べ物にならないほど音が大きくて迫力がある。近くにいたら身の危険を感じるレベルである。

聞いたところによると、マレーシアでは旧正月の3が日だけ爆竹を鳴らすことが許されているのだそう
爆竹を鳴らした後は赤い紙吹雪が道路に残る。これもお目出度いこと(翌朝には掃除してしまうが)

 それが終わると、今度は連続打ち上げ花火を道路上で何発も上げる(日本だったら即アウト)、それを一族の人たちと一緒に盛り上がって見ていたら、いつの間にか新年になっていた。

こんな花火が普通に売られていて、しかも普通に住宅街で打ち上げている

 家に戻ると、翌日の旧正月の初日(初一)に備えて、一族の子供たちにあげる紅包(ホン バオ、お年玉)の準備。こちらの相場は一人5〜10リンギット(170〜340円)と日本に比べてずっと低いが、配る人数がハンパなく、30人分を用意した。子供たちだけではなく、すでに働いていてもまだ結婚していない人にもあげるので、これだけの数になる。30人分で果たして足りるだろうか?

 今回お世話になっている一家の一人に10リンギット札と袋を用意してもらった。この時期は新札の需要が多くて手に入らないので、銀行側が使用済みのお札をピン札みたいにして出してくれるそう。マレーシアの紙幣はポリマー加工なので、見た目はピン札に戻しやすい。

10リンギット札はちょうど赤い色で、中華的にも縁起がよさそう

 というわけで、明日(もう今日だが)の準備も完了。マレーシア華人の旧正月はエンタメ要素満載。明日は何が起こるのかワクワクしながら眠りについた。

佐久間賢三

昨年に続き、今年の旧正月もマレーシアのイポーで過ごす。また来年も……と思ったら、2026年の旧正月は2月17日(火)から。月の半ばは出張が入る可能性が高く、来年の旧正月にイポーに行くのはほぼ無理。それまでの1年間は何を楽しみに仕事をしていけばいいのかと、呆然としている。