F5は8月24日、日本国内の製造業と金融業界における2つの調査レポートを発表した。本調査では、日本の製造業および銀行をはじめとする金融業界における生成AIの導入状況と、セキュリティ面での課題や対策について分析している。その概要は以下のとおり。

日本の製造業と金融業界では、2025年のAIガバナンス改革によって規制がAI導入の障壁ではなくなり、むしろ導入が加速している。一方で、AI活用への意欲とAIセキュリティ対策との間には大きなギャップが生じており、安全なAI導入を阻む最大のリスクとなっている。

過去12カ月でガバナンス改革により導入が加速したと回答した企業は、製造業で48%、金融業で50%に上る。現在の導入速度を左右するのは規制より経営陣の姿勢である。製造業ではAI推進企業の正式導入率が75%と、慎重な企業の59%を上回る。金融業では差がさらに大きく、AI推進企業の導入率は94%に達する一方、慎重な企業は22%にとどまる。

ただし、全社展開はまだ少数派。生成AIを全社展開している企業は製造業で3%、金融業で10%にすぎない。主な用途はコンテンツ作成、ナレッジ検索、分析支援であり、経営陣が期待する最大の効果は生産性・効率性の向上である。

一方、深刻なのが「シャドウAI」である。従業員が未承認のAIツールを利用していると回答した企業は製造業で43%、金融業で50%に上る。しかし、DLP、プロンプトログ、アクセス制限などの技術的対策を導入している企業は製造業で6%、金融業で10%にすぎない。既存のWAFやAPIセキュリティも、プロンプトインジェクションやAI経由のデータ流出など、AI特有の脅威には十分対応できていない。

AIセキュリティ体制が成熟し、継続的に監視されているとする企業も製造業10%、金融業12%にとどまる。データ漏えいと機密性を最大の懸念とする回答は両業界で60%に達する一方、AIセキュリティ予算が場当たり的または未定義なのは製造業41%、金融業42%である。

業界ごとのリスクも異なる。製造業では製品設計データやCADファイルなど知的財産の流出が最大の懸念であり、工場運営や研究開発へのAI導入拡大が想定される。金融業では顧客対応型AIに大きな機会があるものの、顧客データの機密性が最大の障壁となっている。

調査は、AI導入を進めるには、①競争上の必要性を明確にする、②AIに投入できるデータの境界を定める、③承認済みツールと技術的な利用制御を整備する、④既存のセキュリティ基盤にAI特有の防御機能を追加する、⑤専用のAIセキュリティ予算を確保する、という5点を提言している。今後は「AIを導入するか」ではなく、「安全性を確保しながら、いかに迅速に導入するか」が競争力を左右することになる。

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