今回は、広島県東広島市での出張メシ。といっても実はメシではなく、東京に戻る前に広島空港で日本酒とともにいただいた、広島の特産品である。出張地が東広島市だったのでタイトルは「東広島市」としたが、広島空港があるのはその東隣の三原市である。為念。

“酒の都”西条で酒蔵巡り

 そもそも広島空港というのが、広島県の主要都市に行くには絶妙に中途半端な場所にある。羽田空港から広島空港までの飛行時間は1時間20分。しかし、広島空港から広島駅までは空港バスで約50分、広島県第二の都市・福山市の福山駅までは約65分もかかる。空港に着いてからが本番、である。

 一方、新幹線なら東京駅から広島駅まではのぞみで3時間53分、福山駅までは3時間31分。飛行機に乗るには出発時刻の最低30分前には空港入りしておく必要があるし(預け荷物がない場合)、そこからさらにバス移動が加わることを考えると、運賃を度外視すれば、飛行機と新幹線どちらが楽かは正直微妙な勝負である。

 ところが今回向かったのは、東広島市の西条というところ。ここは広島空港からバスでわずか約25分。しかも内陸部にあるため、新幹線に乗り換えて電車で向かおうとすると逆にかなりの遠回りになる。というわけで、今回は迷わず飛行機一択となった。

看板には西条にある8つの酒蔵のブランド名が

 空港バスで西条駅に着くと、駅前ロータリーの向こうのビルに「ようこそ酒都西条へ」の文字を掲げた看板がドーンと出迎えてくれた。西条は兵庫県の灘、京都府の伏見と並ぶ、由緒正しき“酒都”なのである。

 仕事の用事を終えると、日が暮れるまでにはまだ時間があったので、これはもう酒蔵巡りへGo!としか言いようがない。西条駅の近くには西条酒蔵通りがあり、徒歩圏内に7つの酒蔵が並んでいる。白壁の蔵や赤レンガの煙突が並ぶ通りを散策したあと、賀茂鶴酒造で酒蔵見学へ。

西条酒蔵通りでは、蔵の中に入らなくても酒造りの雰囲気が味わえる
中には蔵を改装した蔵元直営店があり、展示見学や試飲、購入ができる
30ml/¥100〜で試飲ができる

 この日は西条のホテルに一泊。夜は居酒屋にも繰り出したのだが、なぜか料理の写真を一枚も撮っていないという痛恨のミス。おかげで何を食べたのかまったく思い出せない。そこでこの時のレシートを掘り起こしてみたところ、「せんじがら」という、まるで暗号のような料理名が浮かび上がってきた。

 ネットで調べると、せんじがらは「せんじ肉」「せんじ揚げ」とも呼ばれる、豚のホルモンを揚げて干し、塩で味付けした広島の珍味らしい。ホルモン(がら)を煎じることからこの名がついたのだとか。

 見た目は決して食欲をそそるタイプではないが、噛めば噛むほど味が出てきて、酒のツマミにぴったりだという。広島土産としても売られているようなので、次回の広島訪問時にはぜひ探しあててみたい。

生ガキの新たな食べ方を知る

 翌日。帰りの便は午後1時すぎだったので、昼前に広島空港へ。搭乗前のランチは何にしようかと空港内を一回りすると、なんとオイスターバーがあるではないか。さすがはカキの名産地、広島。となると、ここはやはり生ガキ一択だろう。合わせる飲み物は、『美味しんぼ』の山岡士郎ではないが(レストランで生ガキを頼み、持参の水筒からグラスに日本酒を注いで「生ガキはこれに限る」と言う話が賛否両論を呼んだ)、ここはやはり日本酒である。

 と思っていたら、皿の奥にちょこんと置かれた小瓶に、琥珀色の液体が入っている。店の人の説明によると、これはなんとシングルモルトウイスキー。これを生ガキに数滴たらしてからいただく——これは、スコッチウイスキーの六大産地の一つであるアイラ島に伝わる生ガキの食べ方なのだそうだ。

 しかもこの小瓶の中身、そのアイラ島で蒸留された銘酒「ボウモア」だという。カキにたらすなどという回りくどいことをせず、いっそこのままフタを開けて飲んでしまいたい衝動と戦うことになった。

 まずは一つ目を一気に口に入れる。アイラ島のシングルモルト独特のスモーキーな香りが、生ガキのミルキーな旨味と溶け合い、絶妙なハーモニーを生み出している……などとカッコつけて言いたいところだが、これは完全にネットの受け売りである。

 それはともかく、シングルモルトをふりかけた生ガキと日本酒は本当に合うのだろうかと、内心ちょっと心配になった。が、その心配は見事な杞憂に終わった。

 余談ではあるが、そもそもアイラ島では生ガキにどんな酒を合わせて飲んでいるのだろうと気になってググってみたところ、AIによる概要では「シングルモルトウイスキーを数滴たらす」という話ばかりが出てくる。

 そこで英語の質問文で検索し直してみたところ、アイラ島産のシングルモルトを飲むという答えのほかに、現地の伝統的な飲み方として「oyster luge(オイスター・リュージュ)」なるものが浮上した。

 これには作法があるようで、まずは生ガキの殻の端を口につけて中の海水をすする。次にグラスに入ったシングルモルトウイスキーをちびりと飲む。ここで飲むウイスキーは、やはりボウモア。それから生ガキを食べ、殻の底に残った汁に少量のウイスキーを注いだら、殻を回してよく混ぜ、殻の端を口につけて一気に飲み干すというスタイル。

 はっきりと確定はできなかったが、冬季オリンピックの種目であるリュージュのトラックコース(生ガキの殻の内側も同じように細くて白い)を滑り落ちてくるイメージから、この名がついたらしい。

 さすがにその時はこの飲み方を知らなかったのでやらなかったが、広島産のカキと日本酒をすっかり堪能することができた。次回はぜひ「オイスター・リュージュ」にも挑戦してみたい。

関連リンク

広島空港(公式サイト)

東広島市(公式サイト)

西条町(広島県)(Wikipedia)

西条酒蔵通り(東広島おでかけ観光サイト)

賀茂鶴酒造株式会社(公式サイト)

せんじ揚げ(服屋オンラインストア)

美味しんぼ(Wikipedia)

アイラ島(Wikipedia)

ボウモア(サントリー公式サイト)

Bowmore Oyster Luge(Danielle Tallon 英文)

吃貨美味探訪記一覧(No.201〜)へ戻る

吃貨美味探訪記一覧(No.1〜200)

佐久間賢三 一昨年、昨年と旧正月をマレーシアのイポーで過ごす。今年も行きたかったが、今年の旧正月は2月17日。月の半ばは出張が入ることが多く、断念。気が早いが、来年の旧正月は2月6日(土)。来年は必ずまた訪れようと、心に誓っている。