今回の出張地元メシは青森県弘前市の津軽料理。派手さはなく地味だけれども滋味深い郷土料理を、駅前の居酒屋で堪能した。それだけではなく、津軽弁を話す地元の人とのおしゃべりも経験した。
津軽の素材を使った郷土料理
前回の黒石市からローカル線に揺られ、弘前へ。地方での仕事を終えて乗るローカル線は、ちょうど高校の下校時間にぶつかることが多い。今日も制服姿の高校生たちと乗り合わせた。

こちらは窓の外に広がる真っ白な雪景色に見とれていたが、彼らはまったく気にも留めず、おしゃべりに夢中。まあ、毎日うんざりするほど見ているんだから、当然か。
30分ほどで弘前駅に到着。予約していたホテルにチェックインし、ひと休みしたら、腹が減ってきた。よし、飯だ。駅周辺をぶらついていると、津軽の郷土料理を出す居酒屋を発見。一人でも入りやすそうな雰囲気。ここにしよう。
まず出てきたのは、貝の刺身三種盛り。

ホタテは分かる。問題は左右の二つだ。右はつぶ貝だろうか? 左は……何貝だ? いや、いい。美味しければ、それでいい。
次にやってきたのが、ホタテの貝味噌焼き。

津軽地方では「貝焼き味噌」と言って、ホタテの貝殻を鍋代わりにし、魚の切り身や味噌、ダシを入れて煮込み、最後に溶き卵を流し込む漁師料理があるそうだ。なるほど、この店ではホタテとカニカマが入っているのか。これは……いいな。味噌の香ばしさとホタテの甘み、そこに卵のまろやかさ。うん、これは体に染みる。
そして「いがめんち」。

イカのゲソを包丁で叩いてミンチにし、刻んだ野菜と小麦粉を混ぜて揚げたもの。弘前では「おふくろの味」として親しまれているらしい。この店ではホタテも入っている。イカの旨み、ホタテの甘み、カリッと揚がった衣……これはたまらん。ご飯が欲しくなるな。
最後は「獄きみ天ぷら」。

青森県最高峰・岩木山のふもとにある獄(だけ)高原で育ったトウモロコシ、「獄きみ」を天ぷらにしたものだ。津軽ではトウモロコシを「きみ」と呼ぶらしい。なるほど、面白い。塩をちょっぴりつけて口に運ぶ。……おお、甘い! とうもろこしの甘さが、口の中で一気に広がる。これは……おやつにも酒のつまみにもなるな。
ふぅ……。やっぱり、地方の飯はいい。知らない土地の知らない料理に出会う喜び。これだから出張メシはやめられない。
雪降るなか、歩いて弘前の繁華街へ
腹が減っていたので、駅前のホテル近くの居酒屋でとりあえず空腹を満たした。だが、どうやら弘前の繁華街は駅前から少し離れた場所にあるらしい。ホテルを出る前にネットで調べて分かった。よし、せっかくだ。腹ごなしに歩いて行ってみるか。
目的地は、桜の名所・弘前公園の近くにある鍛冶町。日が落ちてすっかり暗くなった道を進む。ところが、途中から雪が降り始めた。しかも、だんだん強くなってきた。……これは厳しい。
それにしても、人が少ない。雪のせいか? それとも、平日夜の早い時間だからか? どっちにせよ、鍛冶町に着いたころにはすっかり歩きづらくなっていた。これは無理をせず、引き上げるのが正解だな。

転ばないように慎重に歩き、駅前へ戻る。すると、先ほどの居酒屋で飲んだ酒がすっかり抜けていた。……もう少し、飲みたい。
と、その時、一軒の店が目に入った。個人経営の居酒屋らしい。こぢんまりとしていて、ちょっと飲むには良さそうだ。が、問題はその店構え。引き戸の向こうはまったく見えない。まるで「一見さんお断り」と言わんばかりの雰囲気。どうする……?
よし、勇気を出して入ってみよう。
戸を引くと、奥まで細長い店内。中は地元の客で賑わっている。いい店じゃないか。これは、正解だったな。
一人なのでカウンターに座り、日本酒と小料理を二品。ちびちび飲んでいると、隣のスーツ姿のオジサンが話しかけてきた。
オジサンは、少し言葉に詰まりながら話す。どうやらこちらが埼玉から来たと知って、標準語で話そうと努力してくれているらしい。でも、どうしても津軽弁が混じる。前日の黒石に向かうタクシーでの運転手さんと同じパターンだ。理解できたのは……7割、といったところか。まあ、それだけ分かれば会話は成立する。問題ない。
ふぅ……。津軽料理を味わい、津軽弁に触れる。今回の出張は、まさに津軽尽くしだったな。
と、最後まで読んで、文章が『孤独のグルメ』っぽくないか?と思った方もいるのではないだろうか。実はそのとおりで、いつもどおりの原稿を書いて、試しにChatGPTで「井之頭五郎風に書き直す」と頼んでみたら、自分の文章よりも面白く、そちらを掲載してみたのだ。部分的に修正を入れる必要があったが、恐るべしChatGPT。このままでは、本当にライターがいらなくなる時代が来るのも、そう遠くないことだろう。


佐久間賢三
今年も旧正月をマレーシアのイポーで過ごす。来年も行くつもりでいたが、調べたら来年の旧正月は2月17日。月の半ばは出張が入ることが多く、無理やりにでも行こうかどうか、今から悩んでいるところ。
