今回の出張地元メシは岩手県宮古市。宮古市は太平洋側の三陸海岸に面している。年が明けて間もない頃、新幹線で盛岡駅まで行き、そこから直行バスで宮古市まで向かった。そこで待っていたのは、三陸沖で獲れる海の幸だった。
初めて食べたホヤの味は?
当時、盛岡駅と宮古駅を結ぶJR山田線は、台風の被害により一部区間が不通となっていた。そのため、盛岡駅から宮古駅までは直行バスで向かうしかなかった(その後、全線で営業を再会したが、今年8月末の大雨の影響によりまた全線不通に。その約半月後に盛岡駅から途中駅までの一部区間は運転を再開したものの、このコラムがアップされる時点では、その先から宮古駅までは不通のままとなっている)。

宮古駅に着くと、約束の時間までまだ時間があったので、海産物が並ぶ市場に行って、まずは昼食で腹ごしらえ。食べたのはもちろん海鮮丼である。

7年前の値段だが、これで税込み972円。手元にあった海鮮をとりあえず適当に全部乗っけてみました的な盛り付けがたまらない。さすが漁港のある宮古市である。
午後の用事を済ませ、この日泊まるホテルに荷物を置くと、ネットで調べておいた、街中にある海鮮が自慢の居酒屋へ。平日の午後6時ちょうど。どうやら一番客のようだった。
カウンターに座ると、まずはオススメの刺し身の盛り合わせを頼んだ。一人前で3000円と、かなり強気の値段だったので、他の料理はまず刺し身を食べてからにすることにした。
と、その前に出てきたのがこれである。

これがお通しである。さすが漁港のある街の居酒屋……にしてはかなり豪華である。お通しの料金、いったいいくらなんだ? そんな心配をしつつ、生ビールを飲みながらカニ肉をほじって食べていると、頼んでいた刺し身の盛り合わせが出てきた。

えっと、これで一人前ですか? しかも、アワビに牡蠣、ホタテ、それに丸ごとのホヤまである。ホヤなんて見たことはあっても食べたことがない。いったいどうやって食べるんだろう。丸ごと食べるのか? 初心者らしく、カウンターの向こう側にいる大将に素直に訊くことにした。
「ホヤって食べたことないんですけど、どうやって食べるんですか?」
「外側の皮の中に、刺し身のようにさばいた身があるから、皮を外して食べて」
言われたとおりに皮を外すと、中には薄いオレンジ色の身があった。写真を撮るのを忘れるくらい、初めての体験に興奮していた、というか緊張していたのかもしれない(ちなみに、どこの店でも、料理の写真を撮る際は、必ず店の人に撮っていいか確認してから撮っている)。
お味のほうは、甘みがあって潮の香りが口の中に広がって……などと書きたいところだが、正直いって、これが美味いのかどうか、よく分からなかった。ホヤ初心者には、そう簡単にその旨さを理解することができないのだろう。次回、ホヤを食べる機会があったときに期待することにしよう。
生ビールを飲み終え、日本酒をチビチビ飲みながら刺し身を味わっていると、大将が「サービスだから、食べて」と出してきたのがこの小鉢。

サービスにしてはずいぶん豪華。イカの甘味とイクラの塩気が交わって、口の中でワルツを踊りだす。日本酒1合ではとても足りない。もう1合頼んだ。
すると、頼んでいない一品がまだ出てきた。

殻付きで焼いた牡蠣が2つ。大将曰く「今日は正月明けの初日で、その最初のお客さんだからね」と、これもサービスである。さらに最後には、小さな鍋まで出してくれた。もうお腹は大満足である。

で、お会計の段になってさらにびっくりした。金額はなんと、刺し身盛り合わせの3000円分のみだったのだ。サービスで出してくれた料理の数々だけでなく、お通しのカニと、飲み物の生ビール1杯と日本酒2合までサービス。いくら年明け最初の客とはいえ、地元の常連客ならともかく、出張で来た一見の客にこんなサービスをするなんて、気前が良すぎる。
店を出ると、宮古の1月の夜は寒かったが、日本酒で体は温まり、大将の心遣いで心も温まったままホテルへと戻った。

佐久間賢三
仕事が忙しいわけでもないのに、出張以外にどこにも旅行に行かない日々。マレーシアのイポーで過ごした今年の旧正月が楽しすぎて、すでに来年も行くつもり満々でいる。
