初めての山陰地方への出張は、島根県出雲市。それまで、東西に並ぶ島根県と鳥取県のどちらがどちらだか位置関係が覚えきれずにいたが、この出張でようやく脳みそに刻み込まれた。そこで食べたのは、出雲地方の名物「割子そば」である。
1段目に入れて余ったツユを2段目に
羽田空港からの飛行機で降り立ったのは、宍道湖の西端にある出雲縁結び空港。いつから始まったのか知らないが、日本の空港名には地名の後に愛称のような名前が付いているところが多い。徳島阿波おどり空港とか宮崎ブーゲンビリア空港とか。阿波おどりやブーゲンビリアは、それぞれ現地の名物だから分かるが、出雲の空港にはどうして“縁結び”なのか、到着した時には知らなかった。
それはさておき、空港からバスに乗って出雲駅前へ。現地での用事は午後からだったので、昼食に食べたのは、事前にネットで調べた出雲の名物「割子そば」である。なんでも出雲のそばは、岩手県のわんこそば、長野県の戸隠そばと並んで、「日本三大そば」の一つとされているらしい。全然知らなかった。前回の出張メシ編で、盛岡で食べたわんこそばを取り上げたばかりだというのに。
そして出雲そばは、冷たい「割子そば」か、温かい「釜揚げ」という独特の食べ方をするのだという。というわけで、頼んだ割子そばがこちらである。

普通のざるそばよりも小さい漆器に入れられたそばが、三段重ねで出てきた。正確には「ざる」ではなく、底が平たいお椀である。Wikipediaの引用で恐縮だが、筆者同様に知らない人のために説明しておくと、《これは江戸時代に松江の趣味人たちがそばを野外で食べるために弁当箱として用いられた形式が基となっている》とのこと。つまり、江戸時代のピクニック用ランチといったところか。そして《出雲地方では昔から重箱のことを「割子」と呼んで》いたから、「割子そば」と呼ばれるようになったのだという。
食べ方は、ツユをそばにかけて、薬味を加えていただく。食べ終えたら、お椀に残ったツユを2つめのお椀のそばにかけて、足りない分のツユを新たに加えて、またいただく。そして3つめも……と、ツユは使い回していく。もともとは外で食べるものだったから、ツユを無駄にしない知恵なのかもしれない。
で、そのようにして食べてみた。うーん、食べ方が違うだけで、普通のそばと変わらない。当たり前か。ただ、ツユの味が甘めで、東京のツユとはちょっと違う。正直、ツユはあまり好みではなかった。また出雲に来る機会があったら、次は釜揚げを食べてみることにしよう。釜揚げうどんとはまた違う食べ方で、こちらのほうが面白そうな食べ方である。
午後の用事を終え、夜は出雲の繁華街にある居酒屋へ。地元の若い人たちで賑わう店で、地元の料理をいくつか頼んだ。そのうちの2つが以下。


出雲市で一泊した翌日は、東京に戻る前に電車に乗って出雲大社へ。ここでようやく、出雲空港に「縁結び」という名前が付いている理由を知ることとなった。無知で恐縮だが、出雲大社に祀られている大国主大神は「縁結びの神様」なのだとか。知らなかった。世の中、知らないことだらけである。



佐久間賢三
仕事が忙しいわけでもないのに、出張以外にどこにも旅行に行かない日々。マレーシアのイポーで過ごした今年の旧正月が楽しすぎて、すでに来年も行くつもり満々でいる。
