ガートナージャパン(Gartner)は3月18日、2026年以降のサイバーセキュリティに関する中長期的な展望を公表した。最大のポイントは、AIの本格普及に伴い、セキュリティの重心が大きく変化するという点にある。2028年までに、企業のサイバーセキュリティ・インシデント対応の約50%が、カスタム構築されたAIアプリケーションやAIサービスに関連するインシデントへの対応に集中すると予測している。

こうした状況を背景に、企業ではAIセキュリティ・プラットフォームの導入が急速に進む見通しだ。2028年までには、過半数の企業がサードパーティ製AIサービスの安全な利用と、自社開発AIアプリケーションの保護を目的に同プラットフォームを活用するとされる。これにより、プロンプト・インジェクションやデータ不正利用といった新たなリスクを一元的に管理し、可視化と統制を強化することが可能になる。

一方で、AI規制への対応も大きな課題となる。2027年末までに、手動によるコンプライアンス対応を続ける企業の75%が、全世界売上高の5%を超える罰金リスクに直面する可能性があると指摘。Gartnerは、サイバーGRC(ガバナンス/リスク/コンプライアンス)の確立と、テクノロジーを活用した継続的なコンプライアンス体制の構築を強く推奨している。

さらに、AI活用の前提となるデータ整備の遅れ、いわゆる「AIデータ負債」も深刻化する。2030年までに、IT業務の約33%がデータの整理・保護・統制といった対応に費やされる見込みであり、非構造化データの管理や情報漏洩対策の強化が不可欠となる。データ/AI部門とセキュリティ部門の連携も、これまで以上に重要になる。

また、地政学的リスクの高まりを受け、クラウド利用における「主権」の確保も重要テーマとなる。2027年までに約30%の企業が、地域規制や政治リスクを踏まえ、クラウド環境に対する包括的なコントロールを求めるようになると予測されている。これに伴い、ベンダー選定やデータ配置戦略の見直しが進む可能性が高い。

加えて、アイデンティティ管理の複雑化も大きな課題として浮上している。人間とマシン双方のIDが急増する中で、IDは主要なアタックサーフェスとなっている。2028年までにCISOの70%が、IDの可視化とインテリジェンス機能を活用し、IAM環境全体を統合的に管理することで、認証情報の漏洩リスク低減と検知・対応能力の強化を図ると見込まれている。

総じてGartnerは、AIの普及によってセキュリティの対象領域が拡大し、従来の手法だけでは対応しきれない新たなリスクが顕在化すると指摘している。企業には、AI・データ・ID・クラウド主権といった複数の観点を横断した、より高度で戦略的なセキュリティ対応が求められている。

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