イポー1日目。遅めの朝食を終え、今回お世話になる家(というか、このところ毎回ここに泊まっている)で荷物を紐解いて衣服やお土産を整理していると、昼過ぎになって親戚の一人から「昼飯に行くぞ〜」とお声がかかった。朝ご飯をたらふく食べたばかりで昼になってもまだお腹がふくれているなか、昼食に出ることになった。お腹が空かないうちに次の食事に連れていかれるのは、イポーでは毎度のことである。
お腹もまだ空かないうちに昼食へ
イポーの知り合い一族は本当の親戚ではないが、30年近くにわたり親戚付き合いをしている。今回昼食に誘ってくれたのは、世代的には従弟にあたる男性。彼の息子・娘と一緒に車に乗って焼味(広東語:シゥ メイ)を食べに行った。焼味とは鴨肉や豚肉をローストした肉料理の総称で、焼臘(シゥ ラーッp)とも言う。
お腹が空いていれば3種類の焼味を選ぶところだが、さすがに平らげる自信がなかったので、焼鴨(シゥ アーッp)と焼肉(シゥ ヨッk)を選んだ。それがこれである。

焼鴨と焼肉、どちらも好物で、これに叉焼(ツァー シゥ)が加えればベストの組み合わせである。焼鴨は肉そのものの味が鶏肉よりも濃厚で、焼肉は皮の部分がカリカリで、噛みしめると豚肉の甘さと肉汁が口の中に広がる。日本人的感覚からすると肉料理が2種類も味わえる豪華な食事だが、広東人にとってはいたって普通の庶民メシだ。
なんとか胃袋に隙間を見つけて食べ終えると、次に向かったのはコピの店。鏡湖という観光スポットの近くにできた店で、長江白珈琲という、イポーでは有名なコピの店のチェーン店である。

コピって何だ?という方は、以前のコラム【吃貨美味探訪記 No.154(大馬編その13)「朝はこれを飲まなきゃ始まらない?──Kopi(コピ)」】(旧サイトに飛びます)で取り上げているので、ぜひそちらをご覧いただきたい。
店に入る前に、まずは近くにある石灰岩の岩山の隙間に。イポーはカルスト地形となっているところが多く、こういった崖の隙間や鍾乳洞が数多くあり、そこに寺院ができたり、観光地になったりしている。また、石灰岩を通った水は硬水となり、これで作られた食材や料理は美味しくなることから、イポーは「美食の街」として知られるようになったという。イポーは人口の約7割が華人で、味にうるさい広東人が特に多いということも関係しているのではないだろうか。



店に入ると、まずはコピ選びのためにメニューを見る。一般的な食堂ではこういったメニューはなく、飲み物のリストは壁に貼られている。とはいえ、それをわざわざ見る人などほとんどいない。どこも置いている飲み物はほぼ同じなので、その時に飲みたいものを頼むだけである。

一番上のWhite Coffeeは、コピにコンデンスミルク(加糖練乳)とエバミルク(無糖練乳)を入れたもので、いわば甘いミルクコーヒーである。普通の食堂ではWhite Coffeeなどとは呼ばず、ただKopiという(一般的には入っているのはコンデンスミルクのみ)。
二番目のWhite Coffee “C” Kosongは、コピにエバミルクを入れたもので、甘くないミルクコーヒー。三番目のWhite Coffee “O”は、ミルクが入っていない甘いコーヒー。そして四番目のWhite Coffee “O” Kosongは、ミルクも砂糖も入っていないブラックコーヒーである。他にも飲み方はあるが、基本はこの4つである。
いつも飲み物は親戚の人たちにお任せで頼んでいるので(ホットかアイスかを選ぶくらい)、甘いWhite Coffeeが出てくる。そして今回、初めて自分で選んで、頼んだのがこれ。

見た目ではどのコーヒーか分からないが、White Coffee “C” Kosongである。初めて飲む甘くないコピ。甘くないぶん練乳の濃厚なミルク感を感じることができ、食事を食べる時であれば、こちらのほうがいいかもしれない。それに普段はコーヒーにミルクは入れても砂糖は入れないので、こちらのほうが馴染みがある。
そしてもう一つ、従弟が頼んでくれたのがこれ、カヤトーストである。

トーストした2枚の薄いパンにカヤジャムとバターを挟んだもので、食堂の朝食ではトロトロの温泉卵と一緒に食べるのが普通である。これまで30年近くの間に13回にわたりイポーを訪れてきたが、食べるのは初めて。
タテに半分に切られたトーストの中はこのようになっている。

たっぷり塗られたカヤジャムに、バターの量が半端ない。カヤジャムというのは、ココナッツミルクを主原料としたジャムで、マレーシアが発祥。
トーストはサクサクで、カヤジャムはよい甘さ、そこにたっぷりのバターが加わって、美味いとしか言いようがない。カロリー爆弾のようなこのトーストを食べて、さらにお腹いっぱい。夜には鍋料理が待っている。
佐久間賢三
仕事が忙しいわけでもないのに、出張以外にどこにも旅行に行かない日々。マレーシアのイポーで過ごした今年の旧正月が楽しすぎて、すでに来年も行くつもり満々でいる。
