本田技研工業と東京エレクトロンがOutSystems World Tour基調講演に登壇

 AIを安全に開発・利用していくために、セキュリティやガバナンス、リスク管理、コンプライアンスなどの機能をプラットフォームで管理しようというアプローチが広がっています。

 AIがさまざまなシーンで利用されるようになり特定の部門や担当者による管理が煩雑になっていることに加え、AIを悪用したサイバー攻撃の脅威に特定のソリューションだけで対抗することが難しくなっていることが背景にあるようです。また、AIの安全に利用するための「ハーネス」や「ガードレール」をプラットフォーム側で提供することで、ユーザーがAIの開発や利用に専念できるというメリットもあります。

 そのようなセキュリティなどの機能を備えたAI開発プラットフォームの1つとして採用が進んでいるのがOutSystemsです。日本ではローコード開発プラットフォームの提供で知られる同社ですが、近年は、「Agentic Systems Platform」というアプローチで、業務ユーザーがローコードでAIアプリやAIエージェントを開発し、利用するAIプラットフォームを提供することに注力しています。

OutSystems CEO ウッドソン マーティン(Woodson Martin)氏

 OutSystemsが9月3日に国内で開催したイベント「OutSystems World Tour」の基調講演に、本田技研工業(ホンダ)と東京エレクトロンの推進担当者が登壇し、OutSystems Japan 代表取締役会長&CEO 手島主税氏と、社長執行役 三重野智博氏とのやりとりのなかで、AIを開発・利用していくためにどうガバナンスやセキュリティに向き合っているかを語りました。両社は、OutSystemsがユーザー企業の取り組みをグローバル規模で表彰するEnterprise Evolution Awardの受賞企業でもあります。

ライフサイクル管理や権限管理、環境管理といったガバナンス機能を評価

ホンダ 両角賢一郎氏

 ホンダは、全社DXを支える業務アプリケーション開発基盤としてOutSystemsを活用しています。

 登壇したアシスタントチーフエンジニアの両角賢一郎氏は、OutSystemsの全社展開CoEのリーダーを務めており、これまでに、開発工数の360人月の削減や業務効率化による年間13万時間の工数削減を実現してきました。導入の目的は、スピーディーなDX推進だったそうです。

「OutSystemsを導入したのは4年ほど前です。当時の課題はシャドーITを抑制しながらビジネス部門が安全かつスピーディーにDXを進められる環境を提供することでした。その実現に不可欠だったのがOutSystemsが標準で備える強力なガバナンス機能です。

 ライフサイクル管理や権限管理、環境管理といったガバナンス機能によってわれわれの求める高い統制レベルが実現できました。さらには、AI Mentor(OutSystemsのAI駆動開発ツール)によってすべてのアプリケーションのコード品質を可視化、統制することができます。このような管理機能によってまるですべてのアプリケーションが手のひらの上で動いているように、管理、状況を把握することができました」(両角氏)

 また、CoEチームの役割は、開発者も気づかない不具合を先回りして支援することにあります。

「われわれの最大の特徴は、手のひらで把握した情報をうまくつかってCoEチームがプロアクティブな支援を行う点です。例えば、本番環境で何かシステム異常を発見した場合、CoEが実装内容をチェックして、先回りしてコード修正をうながすといった取り組みをします。これにより、本番障害も限りなく減らし、10から20のプロジェクトを同時並行で回しながら、今では40個のアプリケーションを安定的に動かすことができるようになりました。それによって、全社の業務がモダナイゼーションできたと考えています」(両角氏)

AIエージェントにも共通的に認証・認可、システム連携、ログ管理、モニタリングが必要

OutSystems Japan 代表取締役会長&CEO 手島主税氏

「これからODCを本格的に使っていくんですけれども、ODCについては大きく2点期待しています。1つめはAIコーディングエージェントの実行基盤としてです。ODCにはMentor(バージョンアップによりAIエージェント機能が備わる)というAIコーディングエージェントが標準で備わっていますが、それ以外にも今後Claude CodeやCodexといった外部のAIエージェントと連携できるようになると伺っています。われわれはそのようなさまざまなAIコーディングエージェントの共通的な実行基盤としてODCを活用することで全社ガバナンスを維持しながら安全にAIを使った高速開発が実現できると期待しています。

 今後の取り組みとしては、クラウド環境でのAIエージェント活用を挙げました。それに向けてOutSystemsのクラウド環境(SaaS)であるOutSystems Developer Cloud(ODC)の試用をスタートさせています。

もう1つの期待がAIエージェントの本番化の加速です。現在社内ではさまざまなAIエージェントのPoCが行われていますが、PoCに単なるPoCで終わらせずに本番化につなげていきたい。そこには大きな壁があると感じています。その壁をとっぱらう重要な基盤としてODCを活用したいと考えています。

やはりAIエージェントといっても業務に適用するには共通的に認証・認可、システム連携、ログ管理、モニタリングといった共通的な機能が必要になります。そこはODCがプラットフォームとして提供してくれますので、ODCを活用すればわれわれAIのコア領域に集中して開発ができる。なので、AIエージェントの本番化を加速して、さらなる業務のモダナイゼーションにつなげていきたいと考えています」(両角氏)

 そのうえで、プラットフォームでガバナンスとセキュリティを確保する重要性についてこう述べました。

「創業以来、いろんなことにチャレンジしてきた会社です。クルマやバイクだけでなく、発電機、船外機といったパワープロダクツ、さらには航空機まで、さまざま事業領域があって、かつ組織構造も目まぐるしく変化しています。そういった環境ではエンタープライズレベルのガバナンスとセキュリティを維持しながら、変化に迅速に対応できるプラットフォームが不可欠です。その答えがOutSystemsでした。

 単にOutSystemsは開発が速いというだけでなく、プラットフォームそのものも進化し続けている点をわれわれは評価しています。ローコードからクラウドネイティブなODCへ、そしてAI時代を見据えたAgentic Systems Platformへ。OutSystemsが描く方向性はわれわれホンダの方向性とも非常に似ていると感じています。

 われわれは単なる開発ツールとしてではなく、ホンダのDXとAI活用を支える重要なパートナーとしてOutSystemsさんに期待しています。これからも引き続き、業務変革を進めていきながら、プラットフォームとして進化し続けることを期待しています」(両角氏)

AIが生成するコードの品質や、AIにマルウェアが混入するリスクをどう評価すべきか

OutSystems社長執行役 三重野智博氏(左)、東京エレクトロン柿良幸氏

 東京エレクトロンは、SAPの周辺システムを中心にさまざまなアプリをOutSystemsで開発してきました。アプリ開発期間は半年から2週間に短縮され、開発の効率化によって80億円以上のITコストを削減したといいます。OutSystems開発の取り組みをリードし、現在はコーポレート戦略本部 ディレクターを務める柿良幸氏は、こう話しました。

「OutSystemsは6年前から利用していて、すでに100個以上のアプリケーションが立ち上がっています。(自身がITから離れたあとも)新しいチームにOutSytemを利用した開発を引き継いでいます。(例えば)現在は、SAPをヨーロッパに展開する取り組みを進めていますが、ヨーロッパ側でなかなか要件が決まらず、9月からテストを行う予定でしたが、実際に要件が決まったのが7月末でした。この間1ヵ月しかなかく、要件もコンプレックスでしたが、OutSystemsを使ってアプリケーションを作ることで(短期間で)接続試験までつなげることができました」(柿氏)

 また、AIに対してどんな感想を持っているか、との質問に対しては「OutSystemはAIを非常にうまくインテグレーションしている」と指摘しました。その理由をAIに関する2つのエピソードで説明しました。1つは、AIが生成するコードの品質についてです。

「最近、(シリコンバレーの)サンノゼの企業の人たちと話す機会がありました。彼らは、いわゆるグリーンフィールドでコードを作ってプログラムにしたものをベンチマーク化しているのですが、どのくらいストレートに狙ったアプリケーションを作れるかを同じ条件でテストすると、だいたい80%ちょっとの品質になるそうです。

 この数字を高いとみるか、低いとみるかですが、いわゆる一流のエンジニアがUTで不具合検出のレート設定をするときにだいたい20%くらいで設定されると思います。そうすると、普通のプログラマーが書き出す不具合のレシオくらいにはAIも進化してきているということになります」(柿氏)

 もう1つは、AIが生成するコードにマルウェアが混入するリスクにについてです。

「AIはいろんなソースから学習していて、マルウェアなども学習対象になっています。アメリカでは話題になっているのは、AIベースで部品として提供されているもののうち、60%くらいはマルウェアのエッセンスが混入しているというものです。

 近年のセキュリティ事故の大きなものとしては、AIに入力したデータが学習され、結果としてデータが流出したというものがあります。件数としてもスパイクしています。ただ、その一方で、このようにすでに60%にマルウェア混入リスクがある。AIをストレートに使うことそのものに対してリスクがある状況になっています」(柿氏)

300以上のセキュリティ機能を備え、セキュリティにこだわったプログラムを吐き出す

東京エレクトロン 柿良幸氏

 こうしたリスクを回避しながら、効率良くコードを生成するためにOutSystemsの実装方法がポイントになると柿氏はいいます。

「OutSystemsも、他のプラットフォームのようにAIを組み込んでいますが、(ローコードで書いた)プロセスフローから(プログラム)コードに変換かけていくといい最後のラストワンマイルの仕組みは、25年の歴史が積み上がったものとして、大きく変えていません。今後は、Claude CodeやCodexなど外部ツールや外部関数的なものを使ってコードを吐くということも進めていくと思いますが、この最後の仕組みは変わらないわけです。

 しかも、最新バージョンのO11(Outsystem 11)では、300以上のセキュリティフィーチャーが入っていて、非常にセキュリティにこだわったプログラムを吐き出すことに強みを持ったツールになっています。

 OutSystemsは、最後のコードを吐き出すところにAI(のリスク)が極力入ってこないようにしたうえで、その手前のところでうまくAIを使って、開発ライフサイクル全体を圧縮するというアプローチです。AIのインテグレーションとしてうまくやられたなと思っています」(柿氏)

 そのうえで柿氏は今後について、OutSystemsを使って、アイデアをすばやく形にし、タイムトゥーマーケットを短縮していきたいと話しました。

「Outsystesを使って一番得たいメリットはタイムトゥマーケットです。スピードを上げ、ベロシティを上げていく。なかなか出てこない要件をどう引き出すか。そのためには実際に見せるのが速いのです。人間、批判は上手ですが、ゼロから何かを生み出せと言われてもなかなか生みだせませ。なので、最初に何かを見せて、インスピレーション持ってもらって、そこに対してどんどん叩かれ台として叩いてもらって、よりよくしていくことが重要です。そのファーストステップとしてOutSystemsを使うことで、より全体の生産性や結果を得るまでのスピードを上げていきたいです」(柿氏)

参考リンク

OutSystems