今回の出張メシは高知県高知市。高知といえば「カツオのたたき」が有名だが、今回は出張先の社長さんに薦められた、別のたたきを食べてみることにした。

繁華街からちょっと奥まったところにある店へ

 初めての高知県だったが、用事があったのは高知市からローカル線で西に1時間40分ほど行ったところにある須崎市の安和(あわ)駅。列車の本数がおそろしく少ないのは分かっていたが、用事を終えて駅に戻ると、高知に戻る次の列車まであと1時間45分……。どこかで時間を潰そうにも、駅の周りにはなにもなく、駅のすぐ前に海が広がるだけ。

次の列車は17時5分。15時台に一本くらいあってもいいのに……
駅のすぐ向かい側は海岸。海の向こうは太平洋

 海を見ながら、今後の人生でも考えてみるしかないのか……と途方に暮れそうになったが、近くにバス停があったことを思い出した。うまくすれば須崎駅までバスで行けるかもしれない。須崎駅は須崎市で一番大きい駅で、特急も止まり、高知駅に向かう列車も1時間に1〜2本ある。

 車通りまで戻ってバス停で時刻表を見ると、列車以上に本数がない。がっかりしてハァーッとため息をついでいると、通りがかりの車が目の前で止まった。運転席を見ると、先ほどまで話をしていた社長さん。列車もバスもしばらくないことを伝えると、その先の須崎駅までなら通り道だからと、乗せていってくれることになった。まさに天の助け。

 道すがら、高知でオススメの店を聞いてみると、市内中心部にある店を教えてくれた。ぜひ、そこの「カツオの塩たたき」を食べてみてくれという。というわけで、なんとか無事に高知駅に戻ると、ホテルに荷を下ろして夕方になるのを待ち、繁華街からはちょっと奥まったところにあるその店へと足を運んだ。

 平日のまだ早い時間で、しかも観光客が多い場所ではないからか、のれんをくぐると一番客。メニューを見ながらオーダーして、まずはお通しとして出てきたのがこれ。

 イワシの稚魚・生しらすだが、高知では「どろめ」と呼ばれているそう。生しらすなど人生で二、三度しか食べた記憶がないが、その記憶を遥かに超える美味さ。そのまま永遠に口の中に入れて食感と味を堪能していたいほど。普通に一品料理として出しても良さそうなほどのクオリティだった。

 ビールを飲みながらお通しをつまんでいるあいだ、カウンターの向こうにいる大将が、大きな換気扇まで届くほどの大きな炎で一気にカツオをあぶっている。それもほんのわずかのことで。炎はすぐに治まり、しばらくしてそれが眼の前に置かれた。

 カツオのたたきというと普通はポン酢のようなタレがかかっているが、塩たたきだからタレがかかっていない。一切れを玉ねぎの細切りとニンニクのスライスと一緒に口に入れると、カツオの旨味がグンッと口の中に広がってくる。タレの味ではなくカツオの味。しかも、少しだけ塩が効いているから生臭さを感じることなく味わえる。

 あとでネットで調べてみると、土佐の漁師たちが釣りたてのカツオをサッとあぶり、塩をふって食べていたのが始まりだとか。ある意味、カツオのたたきの原型といえるのかもしれない。今でこそカツオの塩たたきは高知以外でも食べられるようになっているが、この時はまだそれほど知られていなかったように思う。

 次に出てきたのが「ウツボの唐揚げ」。あのウツボが食べられるなんて、このとき初めて知った。高知では一般的な食材なのだそう。食べてみると、白身の淡白な味わいで、意外に(といったら失礼かもしれないが)美味い。ウツボってヘビみたいだから爬虫類の一種なのだろうかと疑問に思い、あとで調べてみたら、ウナギ目ウツボ科の魚類だった。当たり前か。

 そして最後は海から離れ、川の幸「四万十川の海苔天ぷら」。四万十川といえば「日本三大清流」の一つとされるほど川の水がきれいなところ。鮎が有名だが、海苔まであったとは。しかも海の海苔とはまったく違って、なんというか、爽やかな旨味が口の中に溶け出す。

おまけカット1 高知の繁華街でよく見かけるキリンビールの「たっすいがは、いかん」のポスター。土佐弁で「弱々しいのはダメだ」とかいう意味だそうで、このキャッチコピーでキリンビールは高知でシェアNo.1になったとか

 これに生トマトと生ビール、日本酒で、お会計は6000円弱。安いとはいえないが、決して高くもない。このレベルの料理ならお値段以上の価値があった。この店にはそれから3年後に高知出張した時も食べにいったが(その時のお通しは残念ながら「どろめ」ではなかった)、コロナ禍がまだ完全に終わってない頃にまだ高知に行った時には、店がなくなってしまっていた。残念。

おまけカット1 高知の繁華街でよく見かけるキリンビールの「たっすいがは、いかん」のポスター。土佐弁で「弱々しいのはダメだ」とかいう意味だそうで、このキャッチコピーでキリンビールは高知でシェアNo.1になったとか
おまけカット2 高知駅からバスで40分ほどのところにある桂浜には、坂本龍馬記念館や水族館、そして坂本龍馬像がある
佐久間賢三

仕事が忙しいわけでもないのに、出張以外にどこにも旅行に行かない日々。マレーシアのイポーで過ごした今年の旧正月が楽しすぎて、すでに来年も行くつもり満々でいる。