さて今回は、この時のマレーシア行きのメインイベントである結婚式と披露宴についてである。どちらも日本に比べてかなりくだけた雰囲気で、服装も自由にワイワイガヤガヤと賑やかで楽しいイベントになっている。
日本の結婚式とは全く異なる「親族前式」
マレーシア華人同士が結婚する場合、結婚式は「親族前式」とでもいえばいいのだろうか、新郎新婦がそれぞれの実家で、親族およびご先祖様の前で結婚の儀式を行うのが一般的である。
この時は新郎・新婦とも実家がクアラルンプールにあるため、イポーの親族一堂はクアラルンプール郊外にある一軒家に民泊していたことは前々回にお伝えした。そして結婚式当日の朝、車数台に分乗して、新婦の実家へと向かった。今回結婚する新婦が、イポーの一族の一員である。
早めに着いたため、儀式が始まるまでにはまだ時間がある。家の前の駐車スペースに置かれていたテーブルの上には、おそらく結婚式用なのだろう、おめでたそうな色のお菓子があった。

それを少しつまみながら過ごしていると、午前9時半ごろ、新郎を乗せた車が、付添人の男性たちが乗る車とともに新婦の家にやってきた。

上の写真のうち、左上の写真の奥に小さく見えるのが新郎を乗せた車である。車が到着すると、新婦の家では爆竹が盛大に鳴らされる(写真右上)。車の前ではカメラマンが待ち構えて、新郎が車を降りる前から撮影を始める(写真左下)。そして、家の玄関の前では新婦の付添人の女性たちが、新郎と付添人たちを待ち構えているのである(写真右下)。

新郎の付添人の男性たちが車を近くに停めて家の前に来た時には、家の門が閉ざされ、中に入ることができない。門の中にいる女性たちの一人が、門の隙間から手を出し、紅包(ホン バオ=ご祝儀)をよこせとアピールする(写真左上)。
女性たちは受け取った紅包の中身(金額)を見て(写真右上)、もっとたくさんくれないと門を開けてあげない! などといった丁々発止のやり取りをして、女性たちが金額に納得してようやく、門が開いて新郎を含めた男性陣たちは家の前に入ることができる(写真左下)。このあたりは、お約束のやり取りだ。
これで無事に新郎は新婦に会うことが……まだできない。このあと、女性陣が男性陣にさまざまな要求を出し、それに応じて男性陣は踊ったり歌ったり、口移しゲームなどをやらされ、それでようやく家の中に入り、新婦と対面することができる(写真右下)。
ここまでが前フリ段階。この後、この家のご先祖様を祀る仏壇(のようなもの)に新郎新婦が揃って挨拶して、それから新婦の祖父母、両親、おじさんおばさん夫婦、すでに結婚している従兄弟・姉妹たちが順番に椅子に座り、新郎新婦に結婚祝いの紅包を渡す。新郎新婦はお返しにお茶をふるまう。一族の人数が多いので、これにけっこう時間がかかる。

この時に新郎新婦に渡す紅包の中身は、せいぜい20リンギット(600円ちょっと)。日本のご祝儀の額と比べたらかなり低いが、これはあくまでも儀式用で、夜の披露宴の際にちゃんとしたご祝儀を渡すことになっている。
その後は、逆に新郎新婦が椅子に座り、親戚の子供たちに少額のお金が入った紅包を渡していく。新郎が家に到着してからこれが終わるまで2時間ちょっと。その間、親戚の人たちはお茶を飲んだり、おしゃべりしたり、写真を撮ったりして過ごす。
それが終わると、新郎新婦は車に乗り、付添人たちと一緒に新郎の実家に行って、同じように新郎一族との儀式をすることになる。この後、筆者はイポーの親戚たちと昼食に出かけたはずだが、なぜか食事の写真を撮っておらず、どこで何を食べたか記憶にも残っていない。
ご飯を食べている最中にステージへ
夜、クアラルンプール市内にある披露宴会場へ。大きな建物の中に広いバンケットルームがいくつもある会場で、他にも結婚披露宴が行われていた。


上が、この日のメニュー。上から順に「幸福四喜拼盤」「盅仔元貝風冠菌炖土鶏湯」「鮮竹雲耳蒸龍躉件」「独味西班牙黒猪骨」「香草杏片脆玉球」「10頭鮑花菇伴花膠」「堅果脆肉脯炒飯」「蘭花黒芝麻糍拼蓮蓉窩餅」「紅蓮炖桃膠」である。分かりやすいよう漢字は日本語の新字体を使用しているが、見てもどんな料理かさっぱり分からないものがほとんどだ。
というわけで、出てきた料理を出てきた順番に並べてみる。こういった席での料理は、一品ずつ順番に出されていく。


左上「盅仔元貝風冠菌炖土鶏湯」はホタテとアンズタケ(きのこ)が入った地鶏スープ。右上「鮮竹雲耳蒸龍躉件」は魚のハタを蒸してタレをかけたもの。左下「独味西班牙黒猪骨」はイベリコ豚のスペアリブ。右下「香草杏片脆玉球」は揚げたエビにハーブと黒マッシュルームのソースをかけたもの、となっている。
こういう席での料理というのは、周りの人とおしゃべりしたり、ステージ上での余興を見たりしながら食べるので、味をほとんど覚えていない。だが、料理の写真を見れば、どんな味だったかはだいたい予想がつく。

さて、この後に鮑料理、チャーハン、デザートと続くはずだが、料理の写真をまったく撮っていない。おそらくそれは、新婦の父親からステージで歌を歌うよう頼まれ、心が料理どころではなかったからかと思われる。

とはいえ、これは予想されたことだった。というのも、イポーの親族の結婚式に参加すると、披露宴で必ず歌わされるからである。歌う(歌わされる)曲はいつも同じ。テレサ・テン(鄧麗君)が歌っていることで有名な中国語の曲『月亮代表我的心』である。もう歌詞を見なくても歌える。
人に聞かせられるほど歌はうまくないのだが(というか、むしろ下手くそ)、筆者が歌うと親族の人たちは喜んでくれるので、やるしかないかと度胸を決めて歌っている。他に歌う参加者はいないので、イポーの親族向けの余興である。
前回も書いたが、イポーの親族の若い子たちのなかで、結婚式をする人はしばらくなさそうである。次に披露宴で歌うのはいつの日か。せっかく歌うのなら『月亮代表我的心』とは違う歌を歌いたいとも思っているのだが、イポーの親族の人たちは、またこの曲をリクエストすることだろう。
佐久間賢三
仕事が忙しいわけでもないのに、出張以外にどこにも遊びに行かない日々。今年の旧正月にマレーシアに行く予定で、今からワクワクしている。
