前回から始まった香港・深圳編その2は、寺院の黃大仙祠を参拝したその後。再びMTR(地下鉄)に乗り、尖沙咀(チム サー チョイ Tsim Sha Tsui)へと向かった。尖沙咀は、深圳に住んでいた計5年ほどの間に、何度行ったか分からないほど馴染みのある場所である。

九龍サイドからスターフェリーで香港島へ

 黃大仙(Wong Tai Sin)駅からMTRに乗って旺角(Mong Kok)駅で乗り換え、尖沙咀へ。地下から外に出ると、そこは彌敦道(Nathan Rd.)。路上に出た瞬間、尖沙咀は相変わらずの“全部乗せぶっかけご飯”の街。お台場+新宿+銀座を無理やり圧縮した感じである。

 街並みはあまり変わっていなかったが、昔よく通った、日本の新刊本と古本が一か所で買える便利書店(といっても、新刊本は高いので古本しか買ったことがないが……)を探すも、見事に消滅。家賃高騰に負けて不便な場所に移転→客が来なくなり閉店の王道パターンかもしれない。香港あるあるである。

 気を取り直し、そこから歩いて巨大ショッピングモールの海港城(Harbour City)へ。日系スーパーでジャワカレー辛口をよく買っていた思い出の場所だが、今度はフードコートが行方不明。調べたら契約満了で閉店。ここも家賃高騰の圧か……と勝手に納得。

ハーバーシティ内にある日系スーパー。日本の食材も豊富にある
香港の九龍サイドと香港島を結ぶスターフェリー。夕方以降はきれいな夜景が楽しめる

 そこから天星小輪Star Ferry)で対岸にある香港島の中環(Central)に渡り、あてもなく散歩。ふと入った中環街市(Central Market)は、昔の街市(ガーイ シー)がまさかのおしゃれスポットに大変身。知らない間に街も人も垢抜ける。ちなみに街市とは、庶民のための生鮮食料品市場のことで、香港の各地にある……ということは、前回も書いた。

中環街市(セントラルマーケット)には、お土産にぴったりの香港小物を売る店も

 さらに上環(Sheung Wan)へ歩くと、レンガ造りのレトロな建物がオシャレな西港城(Western Market)に遭遇。中には布問屋が並び渋い空気……と思いきや、これも近々リニューアル予定とのこと。結局どこもかしこも進化中。

西港城(ウェスタンマーケット)は、観光客向けの中環街市とは違い、業者向け。リニューアル後はどんな姿になるのか?

 古いものがなくなり変わっていく街にちょっとしんみり……と言いたくなるところだが、そもそも上環は、深圳時代に香港からマカオ行きフェリーに乗るために通り過ぎたことがあるくらい。そんな思い入れが果てしなくゼロに近い人間が言ってもなぁ……。

一人で香港名物B級グルメを食べていると

 さすがにこれ以上先に進むと「完全に思い入れゼロ」のエリアに突入するので、潔くUターン。上環から香港名物の2階建てトラム(香港電車 Hong Kong Tramways)に乗り、のんびり北角(North Point)へ向かった。

香港のトラムは別名「叮叮」(ディン ディン)。日本で路面電車を「チンチン電車」と呼ぶのと同様

 トラムはやっぱり2階の最前列が特等席。でも、だいたい先客あり。夕方に乗るのがベストで、日が落ちてネオンが灯り、涼しい風に吹かれながらの車窓は、ちょっとしたご褒美タイムである。

 北角のトラムが走る狭い通りに沿って、肉や魚、野菜などを売る市というか店が並んでいる。この日の食材を買い求める人で賑わう下町といった感じ。小腹が減ってきたので、近くにあった茶餐廳(ツァ ツァーン テーン)で下午茶(ハー ンー ツァ)をすることにした。茶餐廳は香港独特の形態で、いわば“喫茶店と定食屋のハイブリッド”。庶民向け飲食店。下午茶は午後のお茶、つまりアフタヌーンティーのことだ

北角(ノースポイント)のトラムが通る道は、両脇に生鮮食品や日用品の店が並ぶ市場街となっている
香港の商店の軒先には店猫がいることが多い

 頼んだのは、香港名物のB級グルメで、どこの茶餐廳にもある奶茶(ナーイ ツァ)と、香港式フレンチトーストの西多士(サイ ドー シー)。奶茶は香港式ミルクティーで、濃く淹れた紅茶にエバミルク(無糖練乳)と砂糖が入っていて、ミルクっぽさも甘さも濃厚な味わい。これはもはや単なる飲み物を超えた“飲むデザート”である。

西多士(サイ ドー シー)の西は法蘭西(ファーッ ラーン サイ)の略で「フランス」の意味、多士はトーストの音訳

西多士は香港式フレンチトーストで、2枚のパンの間にピーナッツバターを塗り、それを油で揚げたうえにたっぷりのバターを乗せ、さらにお好みで甘いシロップをかける。カロリーの塊のような食べ物だが、ここまでさんざん歩き回ってきたので、おそらくカロリーはプラマイゼロ。ありがたくいただく。

フレンチトーストの中はピーナッツバターがたっぷり

 4人掛けの席を一人で座って奶茶と西多士のダブルの甘さを堪能していると、一人のおばちゃんが来て、広東語で「ここいい?」と話しかけてきた。周りを見ると、店はいつのまにか満席。「もちろん、どうぞ」。柔和そうな笑顔が魅力的なこのおばちゃん、にこやかに広東語でこちらに話しかけてくる。なんとなくの内容は分かったものの、さすがにこのまま会話は続けられない。広東語で「我係日本人 オー ハイ ヤップーンヤン(私は日本人です)」と伝えた。

 その後は、広東語だったり普通話(標準中国語、いわゆる北京語)だったりで、おしゃべり。とても気さくなおばちゃんだった。気づけば写真撮影→メール送信→Facebook友達追加まで一気通貫。下町は人との距離感が繁華街とは全く違うところがたまらない。

 これがこの日のハイライト。その余韻を抱えつつ、再びトラムに揺られ、今度は香港最大のショッピング街、銅鑼灣(Causeway Bay)へと向かった。ここは尖沙咀と並ぶ香港最大の繁華街の一つで、深圳時代にもっとも数多く来た場所である。

今回巡った場所。赤い線が地下鉄、フェリー、トラムでの移動。Googleマップより作成

関連リンク

黃大仙(香港政府観光局)

MTR(公式サイト 英語)

尖沙咀のショッピングモールやマンション(香港政府観光局)

ネイザンロード(Wikipedia)

Harbour City 海港城(公式サイト 英語)

天星小輪有限公司(公式サイト 英語)

現代の中環街市(香港政府観光局)

上環(Wikipedia)

西港城(Wikipedia)

Hong Kong Tramways – Ding Ding(公式サイト 英語)

北角(Wikipedia)

茶餐廳(Wikipedia)

香港式ミルクティー(Wikipedia)

香港のフレンチトースト!西多士(業務用パン・卸売の老舗パン屋 株式会社カメリヤ)

銅鑼湾(香港政府観光局)

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佐久間賢三

一昨年、昨年と旧正月をマレーシアのイポーで過ごす。今年も行きたかったが、今年の旧正月は2月17日。月の半ばは出張が入ることが多く、断念。気が早いが、来年の旧正月は2月6日(土)。来年は必ずまた訪れようと、心に誓っている。