今回の本題に入る前に、一つ訂正を。イポー旧正月編は第1回から番号を振ってきたのだが、なぜか13回目からズレてしまい、気づけば4回分も多くなっていた。というわけで、誰も気にしていないだろうが、今回が第17回(過去分はこっそり修正済み)。しかもイポー旧正月編の最終回である。前回に続き、今回はイポーのお土産・後編をお届けする。
ミントの葉を入れたのは大正解
前回は、イポーの知り合いたちからいただいた数多くのマレーシア土産をご紹介したが、今回のお土産は自分で買ったもの。現地のスーパーで買ったインスタント麺3種である。というわけで、マレーシアから帰国後、さっそく作ってみた。

まず食べたのは、スーパーの棚でカレー・ヌードルを探していたら、知り合いが「これがいいよ」と推してくれたカレー・ラクサ(curry laksa)。マレーシアには地域によって異なるラクサがあるが、カレー・ラクサは「カレー・ミー(curry mi=カレー・ヌードル)」と呼ばれることもある。

イポーでは何度も食べていて、以前のコラム(吃貨美味探訪記 No.140(大馬編その6)「カレーヌードルの汁なしと汁あり、どっちを食べる? 両方食べる!──咖喱麺その2」)でも取り上げている。

記憶とパッケージ写真を参考に、できるだけそれっぽく作ってみた。具はオクラ、エビ、麩、ミントの葉。本当は麩ではなく揚げた湯葉のほうが本場っぽいのだが、乾燥湯葉を揚げるのが面倒だったので麩で代用。


これぞまさにイポーで食べたカレー麺の味。実は、食べる前はあまり期待していなかったのだが、スープにややとろみがあり、味も濃厚で、予想を遥かに超えて美味かった。次回の日本の友人たちへのお土産に決定!
そして特筆すべきはミントの葉。現地のカレー麺のように、これを入れたのは大正解だった。写真では控えめだが、実際にはこの3倍ほどの「追いミント」を投入。麺と一緒に頬張ると、一気に東南アジアの空気感が立ち上がる。
そして、口の中に広がるミントの香りが鼻腔を通り抜けた瞬間、脳内がベトナム・ホーチミン市にワープ。ホーチミン市にはかつて住んだことがあり、現地ではフォーにミントを大量に入れて食べていたので、それが当時の記憶を瞬時に掘り起こしたのかもしれない。
嗅覚は脳の記憶領域である海馬と直結していて、香りをかいだ瞬間に昔の出来事や感情が蘇ることを「プルースト効果」と呼ぶのだとか。まさにそれを体感した瞬間だった。
そんな付け焼き刃な脳科学のことはさておき、もう一つ気付いたのが、麺のパッケージ。上の写真にある他の2つに比べて、パッケージの印刷がちょっと豪華。パッケージ左下にいる女性の脇に、Sheila Majidというその人の名前らしきものがあったので、検索してみた。すると、Wikipediaに彼女の名前があった。

彼女はマレーシアの有名歌手で、パッケージ写真の撮影当時の年齢は不明だが、今年で御年61歳。デビューしたのは1985年、20歳の時で、日本では1989年に第18回東京音楽祭アジア大会に出場し、同年から日本国内でもCDがリリースされているとのこと。
しかも、YouTubeに東京音楽祭に出た時の模様がアップされていて、彼女の代表曲である『Sinaran(輝いている)』を歌っている姿を見ることができる。1989年だから当時は24歳で、めっちゃ美人さんだ。近年、再び彼女のよさが注目されるようになり、今も歌手として活動中なのだとか。
期待以上と期待ハズレ
話が余計な方向にそれて、しかも長くなってしまった。元に戻そう。続いてはミー・ゴレン(ミーは麺で、ゴレンは揚げる、炒めるの意味。つまり焼きそば)。

作り方は日本のものと同じで、麺を茹でて、湯切りをしたら、ソースの素にからめるだけ。日本のものと違うのが、袋に入っているソースの素が粉末、液体合わせて5種類もあること。それもあってか、複雑な味わいが混じり合い、甘めの醤油味をベースに、うまく味が説明できない東南アジアらしい風味が加わって、日本の焼きそばとは違う、ミー・ゴレンとなる。


カレー・ラクサ同様、美味かったから次回はもっとたくさん買ってお土産に、と思っていたのだが、先日カルディに行ったら普通に売られていた。
そして3つめがアッサム・ラクサ。アッサム・ラクサは、これまでに何度か取り上げてきた(例:吃貨美味探訪記No.152(大馬編その12)「マレーシアで一番の大好物──Laksa(ラクサ)」)。イポーにいると、それだけよく食べるということでもある。

5袋あったので、1袋めは何も具を入れずに素ラーメンで食べたら、スープの味が薄く、とてもアッサム・ラクサとはいえない味。東南アジア風の酸味のある安っぽいインスタントラーメンといった感じだった。
アッサム・ラクサ好きなので、買った時には一番期待していたのだが、3つのなかでは一番の期待ハズレ。あまり期待していなかったカレー・ラクサやミー・ゴレンが予想以上に美味かっただけに、その落差は大きかった(ラクサにひっかけたダジャレではないw)。
そこで、今回の記事のために、具を入れて写真映えするように作ってみた。前回はスープが薄かったので、今回は麺を茹でる湯とスープにする湯を別々にして、少なめのお湯でスープを作った。だから、麺に隠れてスープが見えないくらい、スープが少ない。

具は適当だが、もちろんミントは外せない。食べてみると、スープはやはりアッサム・ラクサの味とはいえないものの、味は前回より濃く、少なくとも不味くはない。しかも、カレー・ラクサと同様、「追いミント」しながら麺を食べると、より美味い。やはりミントは百難隠すハーブだった。
具は少なく、惣菜をおかずに
本来なら上の3つで終わりだが、もう一つ、現地の知り合いからもインスタント麺をお土産にいただいたので、最後にこちらを。日本ではブイヨンで有名なマギーのカレー・ヌードルである。

具に何を入れたらいいか思いつかなかったので、スーパーで惣菜を買ってきて、一緒に食べることにした。現地でも、店で麺類を食べる際は、他におかずを頼んで食べることが多い。そしてやはり、ミントの葉はマスト。スーパーの野菜売り場に、常にミントの葉(99円)があるのは嬉しい。

カレー・ラクサほどの味の深さはなかったものの、カレーの風味とミントの爽やかさが鼻腔を吹き抜け、ゆっくり食べるつもりが、一気に食べ終えてしまった。惣菜のキビナゴの天ぷらを麺の汁に浸して食べるのもまた良し。
冒頭に、今回がイポー旧正月編の最終回であると書いたが、実はマレーシア編自体もこれでネタが尽きた。2020年8月から始め、5年半で61回を数えたマレーシア編も、今回でとりあえず終了。マレーシアには必ずまた行くので、その時にまた再開する予定だ。
ちょうどいいことに、先日、10年ぶりに香港&深圳を訪ねた。そこで次回からは、その時に現地で食い散らかしてきた食べ物を取り上げていく。

関連リンク
「マレーシア、北から南まで名物ラクサ10選」(東南アジア観光情報サイト)
吃貨美味探訪記 No.140(大馬編その6)「カレーヌードルの汁なしと汁あり、どっちを食べる? 両方食べる!──咖喱麺その2」
プルースト効果とは(TOPPAN CREATIVE)
シーラ・マジッド Sheila Majid(Wikipedia)
Sheila Majid performs Sinaran at 18th Tokyo Music Festival in1989(YouTube)
ミーゴレン(Wikipedia)
インドミー ミーゴレン(カルディ・オンラインストア)
吃貨美味探訪記No.152(大馬編その12)「マレーシアで一番の大好物──Laksa(ラクサ)」
佐久間賢三
今年の旧正月は、仕事の都合でマレーシアのイポーで過ごすことができず、現地の知り合いからSNSで流れてくる現地の様子を見るだけ。来年の旧正月(2月6日)こそはと、今からスケジュールをあれこれ考えている。
