2回目の熊本出張は、1回目から1年弱後。2016年4月に起こった熊本地震から5か月後だった。夜は前回も行った熊本料理の店で霜降り馬刺しを堪能した後、宿泊先のホテル手前で居酒屋があるのを見つけ、「生ビール1杯だけ」のつもりで暖簾をくぐった。
ホテルを間違えて予約したおかげで出会った店
そもそもこの時の出張では、予約するホテルを間違えていた。前回泊まったホテルと同じところをネットで予約したつもりだったのだが、実際に予約していたのは、熊本市内の別のところにある同じチェーンのホテルだった。予約の際にホテル名だけしか見ておらず、その後に続く地名まではしっかり見ていなかった。まさか同じチェーンのホテルが市内に2つもあるとは思ってもみなかったというのもある。
昼間の用事を終え、前回泊まったホテルに行ってチェックインしようとしたら、フロントの人から予約が入っていないと言われ、メールを確認したら、予約を入れていたのは別の場所にあるホテルだと判明した次第である。
仕方がないので、熊本市内の繁華街から路面電車に乗って、そのホテルへ。路面電車で15分ほどと、それほど遠くない場所にあったのは幸いだった。

そこでチェックインして一休みしたあと、再び路面電車に乗って繁華街へと戻り、前回の熊本出張の時に行った、馬刺しが自慢の熊本料理の店へ(この時の話は、吃貨美味探訪記 No.195(出張地元メシ編その7)「脂の甘みと旨みに、思わず顔がニヤける──熊本県熊本市・霜降りの馬刺し」を参照)。
霜降りの馬刺しや揚げたてのからし蓮根を熊本焼酎で堪能した後、また路面電車でホテルに戻ることに。電停を降り、ホテルに向かって歩いていると、繁華街でもないのに1軒の居酒屋があった。店の灯りを見たら、なんとなくまだ飲み足りない気がしてきて、生ビール1杯だけ飲んでいこうと店内へ。
他に客はおらず、カウンターに座ってメニューを見ると、「ままかり料理」の文字が。不勉強ながら「ままかり」がなんなのか分からず、カウンターの向こうにいた大将に「ままかりって何ですか?」と声を掛けると、カウンターの脇で芋の皮を剥いていた店のおじさん(というよりおじいさんに近かった)が顔をあげ、「騙されたと思って、ままかりのセットを頼んでみな!」。
そして出てきたのがこれ。ままかりはコハダのような魚だった。

コハダの酢味噌和え、甘露煮、南蛮漬け、そして握り。味の違いが分かるほうではないが、少なくとも握りの味はコハダと変わらなかった。これで500円は安い!(現在は値上がりした模様)
後からWikipediaで調べたところ、ままかりはニシン目に分類されるサッパという魚の別名で、体長は10〜20cm、漢字では「飯借」。一方のコハダはコノシロの成魚になる前の名前で、サッパと同じニシン目。要はお互いに近い種類の魚だった。ちなみに「ままかり料理」は、岡山県の郷土料理だとか。
さらに、1軒目の店では食べなかった馬肉のレバ刺しも頼んでみた。

牛のレバ刺しよりも臭みが少ないように感じ、少しコリコリした歯ざわりに滑らかな味わい。牛のレバ刺しは食中毒の危険性があることから法律で禁止されてしまったが、馬肉のレバ刺しは、しっかり冷凍処理したものであれば、食中毒の危険性はほとんどないから禁止されていないのだとか。
この店は家族経営のようで、居心地がよく、生ビール1杯のつもりが、いつの間にか日本酒に米焼酎まで飲んでしまっていた。

ところで、ままかり料理は岡山県の郷土料理なのに、なぜこれがこの店で出されているのだろうか。熊本でも一般的な料理なのか、それとも店主が岡山出身だからこの料理を出しているのか。いつかまたこの店に行って、聞いてみたいものである。もしまたホテルを間違えて予約したら、の話ではあるが。

佐久間賢三
仕事が忙しいわけでもないのに、出張以外にどこにも旅行に行かない日々。マレーシアのイポーで過ごした今年の旧正月が楽しすぎて、すでに来年も行くつもり満々でいる。
