香港3日目の朝。この日は端午節(デュン ンー ジット)である。前回もお伝えしたとおり、中華圏では旧暦で祝うので、新暦の5月5日に祝う日本とは日付がずれる。しかも日本では「こどもの日」だが、こちらは子供とはほとんど縁がない。そしてこの端午節には、中華圏恒例のイベントがある。この日はそれを見に行くことにしていた。

茶餐廳で朝食を

 同じ油麻地にある別のホテルに泊まっている同級生親子と合流して、まずは朝ご飯。ネイザン・ロード(Nathan Rd. 彌敦道)沿いの茶餐廳(ツァ ツァーン テーン)のチェーン店に入ってみることにした。

 ……よく考えてみたら、香港の茶餐廳で朝食を食べるのは初めてかもしれない。深圳に住んでいた頃、香港にはしょっちゅう来ていたが、たいていは日帰り。深圳から香港に行くのは、埼玉県の大宮あたりから東京の中心部に行くようなもので(途中の荒川を越える際にパスポートが必要になるが)、泊まる必要がなかったからだ。

 だから、香港で朝を迎えたのは、記憶が正しければ友人と泊りがけで香港に遊びに行った3回だけ。しかも、そのときは茶餐廳に行かなかった。実にもったいないことをした。

奶茶が入ったカップの「BLACK&WHITE」のロゴは、エバミルク(無糖練乳)のブランド。多くの茶餐廳の奶茶で使われている

 さて、A餐からE餐まで並ぶ朝食セットのなかから選んだのはB餐。沙嗲牛肉麵(サー デー アウ ヨッ ミン 【サテー牛肉麺】)に、丹麥酥(ダーン マッ ソウ 【デニッシュパン】)のトースト、炒蛋(チャーウ ダーン 【スクランブルエッグ】)、そして奶茶(ナーイ ツァ 【ミルクティー】)。朝からこの豪華な布陣。さらに、菠蘿包(ボー ロー バーウ 【パイナップルパン】)も追加した。

 サテー牛肉麺のサテーは、シンガポールやマレーシア、インドネシアでお馴染みの、肉にピーナッツソースを付けて焼いた串焼きのこと。これが香港に渡ると独自に進化して、ピーナッツバターやニンニク、エビ、スパイスなどを合わせた甘辛いサテーソースになった。これで牛肉を煮込み、茹でたインスタント麺に汁ごとかけたのが、茶餐廳の定番の一つ、沙嗲牛肉麵である。

 5香港ドル(約100円)を足すと、麺を出前一丁に変えることもできるらしい。なぜか香港では出前一丁が日本以上に人気で、たいていの茶餐廳では追加料金を払うと出前一丁の麺(スープは使わない)にしてくれる。

 これについては、以前の(中国美味紀行その84(日本編18)「香港茶餐廳メシ編その4 日本よりも香港で人気の即席麺がメニューに──出前一丁」)で説明しているので、興味のある方はご覧いただきたい。

 日本人の自分にとって出前一丁にそこまでのこだわりはない。ここは普通の麺でいく。

 ……うん、いい。この甘辛いソースが、朝の胃袋にじんわり染みる。

 デニッシュパンは、普通のパンよりほんのり甘く、トーストされてサクサクだ。香港でデニッシュパンといえば、深圳に住んでいたころ、日本の食パン型デニッシュの店が香港に進出してきたので、食べたことがある。検索したら今はもう撤退しているようだが、茶餐廳に食パン型デニッシュが出てくるようになったのは、あの店がきっかけなのだろうか? ……謎である。

 追加した菠蘿包の「菠蘿」は、広東語でパイナップルのこと。「包」は包むという意味ではなく、広東語でパンのことを麵包(ミン バーウ)というので、略して菠蘿包となる。日本でいえばメロンパンのような立ち位置だ。

 メロンパンにメロンが使われていないように(メロンの産地によっては、本物のメロン果汁が使われたものもあるが)、菠蘿包にもパイナップルは使われていない。パンの表面がパイナップルに似ているからこの名が付けられたらしい。このあたりもメロンパンとよく似ている(名称の由来には諸説あり)。

 皮はザクッと香ばしい。熱々のパンを横に切ってバターのスライスを挟み、パンの熱で溶けたころにいただくのが香港流らしい。だがこの日は、他の料理がこってり系だったので、バターなしでいった。……もう、お腹いっぱいだ。

見るよりも参加したほうが楽しそうなドラゴンボートレース

 端午節のこの日は、龍舟(ロン ザウ 【ドラゴンボートレース】)が香港各地の沿岸部で行われている。朝食後は、それを見に行った。

 油麻地から地下鉄で香港島側のオフィス街がある金鐘(ガム ジョン Admiralty)駅へ。そこからバスに乗り、香港島南東部の海辺の街・赤柱(チェッ チュー Stanley)を目指す。バス停で下りると、同じくドラゴンボートレース目当てらしき人たちが、ぞろぞろと道を歩いていた。

 彼らの後について海へ向かうと、広いエリアに大勢の人。おだやかな波の海にはボートがいくつも浮かんでいて、遠くのスピーカーからアナウンスが聞こえてくる。

 ここは、友人や会社の同僚などでチームを組んだ一般の人たちが参加するレースのようだ。観客より参加者のほうが多いくらい(に見えた)。しかもレースは、海の遠くから岸に向かって漕いでくるスタイルなので、状況がよく見えない。これは見るより、参加したほうが面白そうだ。

チームごとに揃いのユニフォームを着た人たちで海辺はいっぱい

 余談だが、実は日本でも、ドラゴンボートレースを見たり参加したりできる。それが「横浜国際ドラゴンボートレース」。横浜開港記念日の6月2日の前後の土日に、山下公園に面した海上で毎年開かれている。こちらもいつか見に行って(参加も?)みたい。

 赤柱でのレース見物はそこそこにして、再びバスに乗り、別のレース会場へ向かうことにした。そちらでは、迫力満点のレースを目の前で見ることができた。……その話は、次回に。

おまけカット:旺角(モンコック)にある夜のお店のスタッフ募集の看板。広東語ではなく國語、つまり中国標準語が分かる人、さらには湖南語、四川語、福建語が分かる人を募集している。客は大陸人がほとんどということか?

関連リンク

端午(Wikipedia)

ネイザンロード(Wikipedia)

冰室と茶餐廳(日本香港人協会)

デニッシュ(Wikipedia)

香港式ミルクティー(Wikipedia)

お菓子の切手「香港のパイナップルパン」(ロッテ)

「インドネシアで最も有名な料理、サテー!」(Visit Indonesia)

出前一丁(日清食品香港)

中国美味紀行その84(日本編18)「香港茶餐廳メシ編その4 日本よりも香港で人気の即席麺がメニューに──出前一丁」(セキュリティ・インサイト)

日本ドラゴンボート協会(公式サイト)

スタンレーへ行こう(香港ナビ)

横浜国際ドラゴンボートレース(公式サイト)

横浜開港祭(公式サイト)

山下公園(横浜市観光情報サイト)

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佐久間賢三

一昨年、昨年と旧正月をマレーシアのイポーで過ごす。今年も行きたかったが、今年の旧正月は2月17日。月の半ばは出張が入ることが多く、断念。気が早いが、来年の旧正月は2月6日(土)。来年は必ずまた訪れようと、心に誓っている。